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油絵具のトラブル‥表面の変化、人体への影響、火災

火事

油絵の制作中には様々なトラブルが発生します。
絵の具がはじかれたり下の色がにじみ出たり。

時にはひび割れをおこしたり…。
こうなっては、せっかくの作品が台無しになるだけではなく、あまりのショックで立ち直れなくなりそうです。

また、後片付けの仕方によっては、火災を引きおこすこともあります。

どうしてこういうことが起こるのでしょうか。

この記事では、油絵具のトラブルに対する原因とその対処法について紹介します。

油絵制作中に起こるトラブル‥表面の変化

制作中のトラブルはモチベーションにも影響するので、是非とも押さえておきたいところです。

はじき

塗り重ねた絵の具やワニスが水滴のようにコロコロとはじかれ、きれいに塗れないことがあります。

この現象を「はじき」といいます。

油絵制作では、顔料と乾性油が反応し金属石鹸が生成されますが、その典型的な例はジンクホワイトの使用時に認められます。

ルツーセを含ませた布などで画面を軽くこすり、金属石鹸を除去することで対処できます。

※ 場合によってはうまくいかないことがあります。

ブリード(にじみ)

下に塗った色が上層ににじみ出てくることがあります。
これを「ブリード(にじみ)」という。

アリザリンクリムソン、クリムソンレーキなどの、アリザリン顔料 (PR83)を使用した時にこの現象が認められます。

防止策は、これらの色を下層で使わないことです。

もどり

一度乾燥した表面が軟化する現象を「もどり」といいます。

極端な厚塗りを重ねた場合や、空気の流通不足などが原因です。
これは内部乾燥が完全であれば起こりません。

防止策として極端な厚塗りや、過剰なシッカチーフ (乾燥促進剤)の使用を避けることです。

表面乾燥した直後の額装や、密閉梱包も避けたいところです。

油絵制作時や、完成作品に起こるトラブル...色の変化

完成作品の色が変化することは、作品の印象そのものが変わってしまいます。

きれいだと思える色で表現できたとなれば、それはいつまでも変化してほしくないものです。

長期的にきれいな色を保ったり、制作時の色の濁りを防いだりするには知識や技術が必要となります。

混色による化学変化‥硫黄系の顔料と鉛系の顔料

成分中に硫黄成分をもつ顔料が、何らかの理由で硫黄を発生させることがあります。

これを遊離硫黄と言いますが、これが鉛系の顔料と反応した時に硫化鉛ができます。

この硫化鉛が色を鈍くしたり、暗くしたりする原因となるのです。

以下にそれぞれの系統の絵の具を示します。

硫黄系の絵の具

絵の具のラベルには「N」の表記があります。

ウルトラマリン、カドミウム系(イエロー、オレンジ、グリーン、レッド)、バーミリオン

鉛系の絵の具

絵の具のラベルには「S」の表記があります。

シルバーホワイト、ファンデーションホワイト、クロム系(イエロー、オレンジ、グリーン)

※ 現在では顔料の精製技術も向上し、まったくと言っていいほど変化は認められないといわれているので、それほど神経質になる必要はありません。

✅ 以下のリンクに詳細を示していますので、興味のある方はご覧ください。

狼色

色利きの違いにより、混色時に思った色を作れないことがあります。

着色力の強い色を俗に「狼色」という。

狼色は他の色と等量で混色すると、極端に相手の色の発色を弱めてしまうので、混ぜ合わせる分量に注意したい。

例として、チタニウムホワイトやプルシャンブルーなどがあります。

顔料と油の反応

ジンクホワイトの顔料は「亜鉛華」ですが、これが油と反応してできる物質が、画面を暗く感じさせることがあります。

絵の具メーカーは顔料に見合った油を使っていますが、この件に関しては避けようがないようです。

見え方による変化‥混色する色数が多い

絵の具などの色材は、たくさんの色を混ぜるほど黒に近くなります。

これを減法混色と言います。

昔から「三色以上混ぜるな」と言われているのは、この原理によるものです。

ホワイトの混合による濁り

ホワイトを混ぜすぎると、明度は上がり明るいパステル調の色合いにはなりますが、彩度は下がります。

つまり、色は鈍くなるのです。

中間色には、すでに白色顔料が入った色があるので注意が必要です。

色の変化によるトラブルは、化学変化による彩度低下より、単純な視覚的影響を意識した方が良いでしょう。

油絵完成作品に起こるトラブル‥ヒビ割れ、剥離

一生懸命描いた作品や我ながら上手く描けたと思う作品に、ヒビ割れが起こってしまったり剥がれてしまった、という経験をした方もおられるのではないでしょうか。

ショックですよね。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。

極端な厚塗りをした場合

油絵具は空気に触れている部分から乾燥し固まっていきます。

極端な厚塗りをした場合、絵の具の表面乾燥だけが進むと、内部が乾燥する際の体積変化に追随できなくなりヒビ割れを起こします。

防止策は極端な厚塗りは避けることです。

ジンクホワイト

剥離の原因としてよく耳にするのが、下層でジンクホワイトを使うことです。

ジンクホワイトの顔料である亜鉛華は、乾性油と反応すると金属石鹸を生成します。

この金属石鹸が生成された表面に絵の具を重ねると、後日絵の具が剥がれることになってしまいます。

防止策はジンクホワイトは使わないことです。

〈白〉としてのジンクホワイトは美しいので、使用する場合は最上層のみに使います。

メーカーによっては、各種の〈白〉にジンクホワイトを混入しているものがあります。

表記にもジンクホワイトと示されていないので、顔料組成を確認しましょう。
ジンクホワイトは「PW4」です。

絵の具や画溶液による人体への影響と火災

絵の具や画溶液による健康被害は少なからずあります。

近年、使用する人たちへの健康被害を考えて、できるだけ害の少ない原料が使われるようになってはいるものの、技法上その使用が避けられないものもあります。

害と予防については、ぜひ押さえておきたいところです。

口からの摂取

幼児のいる家庭では注意が必要です。

画家が絵の具を直接口から取り込むことはまずないだろうが、洗浄後の筆を口で整える癖のある画家に重金属中毒の表れた例があります。

セーブル等の軟毛の筆を洗浄後に唾液で固めておくと、筆先がまとまって後日使いやすいからです。

吸入

油絵制作において使用する揮発性油が呼吸により体内に入ると、ヘモグロビンと結合して全身に運ばれます。

使用時の換気は十分に行いたい。

油絵を趣味にする友人から、愛息が小児喘息が引き起こしたと聞いたことがあります。
これも、テレピンによるものだそうですが、小児の発症例は少なくないようです。

喉にイガイガを感じたら、気管支からのサインです。

パステル使用時に生じる粉じん、あるいはエアーブラシ使用時の霧状の絵の具も同様です。
マスクの使用、換気を行うことが望ましい。

皮膚からの吸収

毛穴や傷口からの吸収され得るが、急性中毒の心配はありません。

しかし、皮膚に付着した場合は速やかに取り除いた方が良いです。

特に、シルバーホワイトの使用に関しては、素手での使用を避けたい

火災

絵画制作の画溶液には、可燃性の溶剤を含むものが少なくありません。

そのほとんどは、引火点が高いので室温で引火することはありませんが、何らかの要因で室温が上昇した時に、火源があれば引火する可能性はあります。

油彩用の溶剤では、単独で発火することがあるので特に注意したいところです

乾性油が乾燥(固化)する際、酸素と結びつき酸化重合反応を示します。
この時、わずかながら発熱するのです。

発熱といってもささいなものですが、放熱されずに蓄熱されると自然発火します。

猛暑日に、油をふき取ったボロキレや新聞紙などを袋に入れ密閉した状態で放置し、それが原因で発火した例があります。

油絵制作にはこういうゴミが出るので、その処理には十分に注意しなければなりません。

最後に

作品自体に影響が出ることはショックではありますが、健康被害や火災などにも十分に注意したいところです。


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