
SNSの発達により、手紙を書く機会はめっきり少なくなりました。
年賀状を辞退する人も増えています。
賀状をもらうのは嬉しいけれど出すのは億劫…それが本音ではないでしょうか。
しかも、手紙には形式があります。
これは、慣れてなければ厄介なものでしかない。
手紙を遠ざけてしまうのも当然だと思います。
個人的には、展覧会の案内状やご来廊のお礼状などを出すことが多く、そういう意味では手紙を書く機会は多い方だと思います。
時代遅れかもしれませんが、この記事では手紙の書き方と、楽しみ方について触れてみます。
書き慣れれば、手紙を書くことも楽しくなりますよ。
手紙の書式

手紙には型があります。
これが最大のネックになって、ほとんどの方が書くことをためらってしまうのでしょう。
型にとらわれ過ぎて書かないよりは書いた方がいいので、それほど気にしなくてもいいと思いますが、相手によっては押さえておきたいところです。
まずは手紙の型を知っておきましょう。
① 前文
書き始めの挨拶分です。
・頭語 「拝啓」、「拝復」など。
・時候の挨拶 「春暖の候」「秋めいてまいりました」など。
・相互の安否の挨拶 平素の疎遠を詫びる言葉など。
これらすべてを略して、「前略」とし、すぐに本文に入ることもあります。
② 本文
前文を受けて、「さて」、「ときに」などの起辞を置き、本文へとつなぎます。
➂ 末文
「まずは右お願いまで」、「取り急ぎご連絡まで」と区切り、「敬具」、「頓首」などの結語で結びます。
頭語と結語の組み合わせは決まっています。
④ 後付
日付、署名、宛名を書きます。
日付は本文より1字か2字下げて書き、署名は日付の次の行、末尾を本文の行末に揃えて書きます。
宛名は目上の人なら日付より高く、同輩なら同じ高さに、後輩には低く書きます。
➄ 副分
追伸文です。「追って書き」「なおなお書き」ともいいます。
副分は書かない方がよく、目上の相手には避けたいものです。
押さえておきたい手紙のマナー
以前、とある小学校の教員から頂いたお礼状に驚いたことがあります。
まず、文章が分かりにくく内容も稚拙。
これで教員が勤まっているのか、と呆れるほどでした。
その上、ホワイトを何箇所使ったら気が済むのか、というくらい修正している。
手紙の型もめちゃくちゃ。
使っている便せんはキャラクターもの。
若い方でしたから、手紙の書き方を知らないのも無理はないのですが、これではお礼の効果も半減してしまいます。
最低限のマナーは押さえておきたいものです。
ここでは、七つの項目を挙げてみました。
① 便せん1枚で終わる内容なら葉書に書く
便せん1枚で終わる手紙には、余分に白紙の便せんを1枚添えるという習慣を聞きますけど、もらった方はどことなくがっかりします。
封書で出すなら、最低2枚は書きたい。
ただし、2枚目は3分の1程度の余白を残すと、見た目が美しくなります。
② 書き間違えたら書き直す
特に、目上の人に対する手紙は、修正液を使うことは避けるべきです。
友達レベルなら、二本線を引いて訂正すればいいでしょう。
➂ 罫線入りの便せんは略式扱い
目上の人や、仕事相手には使わない方が無難です。
④ 下手な字で書くより、パソコンの文字の方がいいか
パソコンで書いたのなら、そのままメール送信すればいいと思います。
下手な字が失礼ではないし、肉筆の方が温かみが伝わりやすいものです。
➄ 「拝啓」ではなく、「前略」から書くと失礼か
形式を重んじるタイプや、かなりの年配の相手でなければ気にすることはないでしょう。
文章に相手への敬意を込めればそれで十分です。
⑥ 自分の住所は必ず書く
受け取った相手が返事を書く場合、差出人の住所がないと、調べる手間がかかります。
もう一つは、宛先を書き間違えていた場合、差出人の住所がない手紙は行き場を失うことです。
⑦ あらたまった内容には、白い便せんを使う
便せんや封筒は、白が礼儀にかなったものとされます。
送って楽しい、もらって嬉しい手紙にするために
手紙を出すにあたって、いくつかの楽しみ方があります。
これに関しては、手紙を受け取る側の気持ちを考えるとよいでしょう。
ここでは、一般的なことに加えて、個人的に意識していることを紹介します。
① 封筒
文具店に行けば、いろいろな封筒が売られています。
茶封筒、白無地、花柄、和紙…さまざまに買いそろえておいて、相手や機会によって選んでいます。
② 便せん/ポストカード
封筒と同様に買いそろえておき、これも相手によって選んでいます。
ポストカードは展覧会などで買うことが多いです。
➂ 筆記具
筆ペン、ボールペン、カラーサインペンなどを使い分けています。
④ 切手
切手は手紙の顔です。
記念切手をコレクションしておいて、季節感を演出したり、手紙の内容によって選んだりします。
下の写真のように、貼り方を工夫しても面白いと思います。

郵便局のホームページによると、切手は基本的には「縦長にしたときの左上」に貼ることになっています(下図)。
横長の手紙の場合は右上です。
これは機械でスムーズかつ正確に仕分けるためだそうです。
※ 斜めになってはいけないとは明記されていません。
※ 枚数の制限もしていません。

➄ 文香(ふみこう)
手紙に入れるお香です。
落ち葉の形や、動物の形などさまざまな種類があります。
(※ 1円玉はサイズの参考です)
封筒に入れておくと、香りも一緒に届きます。


文香は手紙だけでなく御祝袋に入れたり、鞄や名刺入れにそっと忍ばせておくのもいいものです。
贈り物にも最適です。
種類は全部で26種類、香りは白檀をベースに調香されています。
名詞入れに忍ばせておき、うつり香とともにお渡しすれば、お洒落なだけではなく印象に残ること間違いなしです。
これ、けっこう使えますよ。
話のきっかけにもなりますし。
ポストクロッシング

ポストクロッシングをご存知でしょうか。
世界中にいる会員同士が、葉書(通常は絵葉書)を送りあうことを楽しむものです。
他の会員に葉書を郵送すると、別の会員から葉書が送られてきます。
送る相手も送られてくる相手も、コンピューターが無作為に選びだすので、思いもしない国から葉書が届くのです。
郵便ポストをびっくり箱にしようとする、なんとも素敵なプロジェクトではありませんか。
ある日突然見知らぬ国のポストカードが届いていたら、きっと嬉しいでしょうね。
ただ、世界中の人達とやり取りをする性質上、英語を共通語として使います。
英語の勉強にもなるので、気になる方はお試しを。
最後に
手紙を書くことは楽しいのです。
相手のことを考えて言葉を届ける…なんとも素敵なことだと思いませんか。
SNSが盛んになっている今だからこそ、手紙の良さに気づいてほしいものです。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
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