
公募展などで大作を発表する際、具象絵画であれば額が必要です。
だからといって、わざわざ額縁を購入して出品しても、手元に作品がもどってきた時には、額のいたる所にキズが付いていることが多く、かなりショックを受けます。
それが高級な額縁なら尚更です。
ですから、大作の額は手作りしたものを使うようになりました。
この記事では、安い材料費で見栄えのする額縁の作り方を紹介します。
棹の加工
材料を必要なサイズに切ります(図1)。
コーナーは45°には切りません。

棹材にはホワイトウッドを使っています。
この木材は耐久性が非常に低く、シロアリが発生しやすいので、建築資材としては最悪です。

ただ、柔らかく加工がしやすい上、価格も安いのでこれを使っています。
ちなみに、38×89×1820㎜で1本300円前後です。
今回はM80号用を作るので3本で済みます。
ジェッソで下塗りします(図2)。
上に塗る絵の具の発色を良くするためです。

ビス止め用の下穴(径10.5㎜)を開け、さらにネジの頭が入る径で、深さ50㎜程度の穴を開けておきます(図3)
✅ 垂直に穴を開けないと組み立ての時に、合わせ目がズレたりします。


こういう作業には卓上ボール盤 があると便利です。
DIYに興味がある人は、1台持っておくことをおすすめします。
価格も15,000円前後でお手頃です。

???? 最初は1回使ったら2度と使わないと思いましたけど、買ってよかったです。
大作用の額だけでも5面作りましたから、かなり重宝しています。

最後に塗る茶系の色に深みを与えるため、必要な部分だけ赤を塗っておきます(図4)。
ここでは、アクリル絵の具のカドミウムレッドを使用。

棹の組み立て
ねじ止めするためにクランプで固定します(図5)。

開けておいた下穴にネジを入れて固定します。

以前は125㎜のネジを使っていました。
でも、小分け販売が中止されていたので、今回は90㎜のネジを使っています。

✅ ネジ部が長いので、「インパクトドライバー」 があれば楽です。
手でねじ込むのは大変なので、これがあると相当便利です。
価格は15,000円程度です。

木工用ボンドを塗り、径10㎜の丸木を打ち込んでネジ穴をふさぎます(図6)。
この丸木はホームセンターなどで売られています。

四角に組みあがったら、アクリル絵の具で好みの色に塗ります(図8)。

入れ子、コーナーの飾り板の加工
入れ子と飾り用のパーツを切り、ジェッソで下塗りをします(図9)。
入れ子のコーナーは45°にカットします。

入れ子は檜の角材、コーナーの飾り板にはファルカタ材を使いました。
ファルカタ材はDIYでもよく使われる木材です。
軽くて柔らかく、加工がしやすいのが特徴です。

入れ子は四角に組まずに、直接棹にネジ止めするので、下穴を開けておきます(図10)。
ネジの頭が隠れる穴も開けておくと、仕上がりも綺麗です。

金の発色をよくするために、赤を塗ります(図9)。
今回はカドミウムレッドを使用。

赤を塗るのと、塗らないのとでは、金の発色がぜんぜん違います。

金を塗ります(図12)。

✅ 今回使った金はRowney社の「Gold Finger」です。

アクリル絵の具を使うより、金の輝きがいいのでこれを使いました。
本来は額ブチの補修用です。
金の色も何種類かあるので、お好みで選んでくださいね。
ちなみにこの金は“antique gold”です。

入れ子、コーナーの飾り板の取り付け
入れ子を棹にネジ止めします(図13)。
図13で丸く見える物は椅子鋲です(図14)。
椅子鋲は椅子の表布を張るための鋲で、ホームセンターなどで売られています。


コーナーの飾り板を、木工用ボンドで止めます(図15)。

この飾り板は、棹を45°にカットしないための工夫です。
90°にカットしてることは、目立たなくなりますから。

吊り金具を取り付けます(図16)。

作品の固定方法

今回は(図17)のように10か所で固定しました。

ホームセンターなどで売られている金属プレートを使い、(図18)のようにネジ止めします。
棹と作品に若干の高さのずれがあるので、プレートは曲げて使っています。
最後に

展覧会場の様子です(図19)。
???? 会場でも見劣りするどころか、堂々としていると思いませんか。
手間はかかりますが、手作りも悪くないと思います。
手作業で加工するのは大変なので、作業には卓上ボール盤、インパクトドライバーの他に、電動丸ノコなどの工具も使っています。

材料費は7,000円程度で作れました。
このうちの約半分以上が吊り金具代です。
額縁は思っている以上に安く作れるだけでなく、作ってみると意外に楽しいものです。
あなたもDIYで額を手作りしてみませんか。
手作りが苦手という方には…
ちなみに、手作りが苦手という方にはこんなアートパネルはいかがでしょうか。

アートパネルであなたのリビングを素敵に彩ります。
新築祝い、開店祝い、引っ越し祝いなどにも最適です。

遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
コメント