
画材店に行くと様々な種類の筆を目にすると思います。
どの筆を選ぶかは、描く絵のスタイルや個人の好みによるので一概には言えませんが、基本的なことは知っておきたいところです。
手入れについても、十分でありたいものです。
筆の手入れが行き届いていないと、描きにくいだけでなく長持ちしません。
✅ この記事では、油絵用筆・アクリル用筆・水彩用筆の種類と手入れの仕方について解説します。
筆の種類について
一般的に、柄の短い筆は水彩用、長い筆は油絵用として売られていますが、だからといって水彩用の筆を水彩、油絵用の筆を油絵と決めて使う必要はありません。
大きく分けると、剛毛筆と軟毛筆の二種類があります。
剛毛筆

剛毛筆の代表は豚毛です。
ねばりの強い油絵の具に対応できるように、腰の強い毛が使われています。
軟毛筆
軟毛筆には、牛、馬、狸、マングース、テン、イタチ、リス 、ナイロンなどがあります。
この中でナイロンだけが人工繊維です。
水彩の筆には、特に軟らかいリス、イタチ、テンなどが使われています。
コリンスキーと呼ばれる高級な筆や、イタチの毛とナイロンの毛をブレンドした、リセーブルと呼ばれる筆もあります。
人工繊維と獣毛の違い
獣毛は人工繊維に比べると、絵の具の含みが良いです。
ナイロンの筆は、長く使っていると、穂先が広がってくる欠点があります。

ここに紹介するナイロン筆の穂先はそれほど広がっていませんが、状態が悪くなると反り返るように広がります。
これを再生させる方法はないか試行錯誤してみましたが、決定的な方法は見つかっていません。
熱湯につけるとほんの少し元に戻りますが、残念ながら毛先はまたすぐに広がってしまいます。
最近では、広がった穂先を握りばさみでカットして使っています。
緻密な作業には使えませんが、描き始めの大雑把な着彩や背景の処理に十分使用できます。

長年、手打ち芳之助の握りばさみを愛用しています。
今でもよく切れます。
筆先の形

丸い穂先と、平たい穂先の二種類があります (写真左から、丸筆、平筆、フィルバート、ファン)。
さらに、平たい穂先には平筆、フィルバートの二種類あります。
扇型をしたファンというタイプの筆もあります。
これは、主にぼかし用です。
サイズ
同じ号数の筆でも、メーカーによって大きさが違うので、見た目の印象で大、中、小と選べばいいでしょう。
筆の手入れの仕方
油絵の筆がカチカチに固まって、ほとんど機能していない…、
そんな筆を平気で使っている人をよく見かけます。
十分な手入れができていないのです。
手入れができいる筆とできていない筆は、次の写真のように一目瞭然です。

手入れが出来ていない筆(写真右)は、絵の具が毛の根元で固まってしまっているため、まったくしなりがなくなっています。
筆の色も茶色く染まっています(元は白い筆でした)。
これでは良い仕事はできません。
以下に、手入れの仕方を紹介しておきます。
油絵筆の手入れ
まずは新聞紙やボロ布などで、余分な絵の具をぬぐい取ります。
筆を専用のクリーナーでよく洗います。
この時、容器にゴシゴシこすりつけたりすると毛が傷んでしまうので、優しく丁寧に洗いましょう。
クリーナーで洗っただけでは、筆に残った油分が固まってしまうので、さらに石鹸で丁寧に洗います。
洗い終えたら水分を拭き取り、形を整えてよく乾かします。
✅ セーブルやコリンスキーの筆は、水気をとってから唾液で湿らせて穂先を整えて乾燥させます。
こうしておくと穂先が鋭くまとまり、次に絵を描く時に使いやすくなるからです。
アクリル筆の手入れ
アクリル絵具は、固まるまでは水に溶けます。
しかし、油断をして絵具がついたまま放置すると、固まってしまいます。
特に、アクリル絵具などの速乾性の絵具を使用する場合は、こまめに洗うことをお勧めします。
制作が終わったら、水道の蛇口の下で根気よく揉んで完全に洗い流します。
個人的には油絵筆同様に石鹸で洗っています。
水彩筆の手入れ
水彩絵具は水溶性ですから、水だけでよく洗うほうが良いでしょう。
洗い終えたら水分を拭き取り、形を整えてよく乾かします。
固まった筆を再生させる方法
再生させる方法は、筆の状態によっていくつかあります。
筆洗液APT(アプト)を使う方法

筆の状態が悪くなければ、筆洗液APT(アプト)で再生させるこができます。
筆洗液APT(アプト)は、毛質の痛み、手荒れ、臭気、火気の心配がないので安全に使えます。

写真上の2枚は、再生させる前の状態です。
毛は絵の具の色に染まりクセもついていますが、根本は固まってはいません。
この程度なら筆洗液APT(アプト)でかなり再生できます。
筆洗液APT(アプト)に一昼夜浸けた後、石鹸で洗った状態が写真下になります。
どうですか。
かなりきれいになったと思いませんか。
筆先に色が少し残っていますが、これくらい再生させることができれば十分使えます。

剥離剤を使う方法
穂先のしなりを失うほど固まった筆は剥離剤を使います。
完全とまではいえませんが、かなり再生させることができます。
最後に
道具の状態は、作品を表しているものです。
手入れはしっかりしておきましょう。
筆は消耗品なので、穂先が短くなったら買い替えることをお勧めします。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
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