同じ「白」のはずなのに、どうしてこんなに種類があるのか。
特に油絵具の白にはたくさんの種類があって、どれを選んだらいいの迷ってしまいます。
基本的には水彩絵の具も油絵の具も顔料は同じですから、顔料の性質がわかれば白い絵の具の特徴もわかるということになります。
この記事では、絵の具の「白」の違いについて解説します。
油絵の具編
油絵の具には毒性や混色制限があるものがあり、これらはラベルに記載されています。
次のリンクでラベルの見方を紹介していますので併せてご覧ください。
中描きならシルバーホワイト
■ 展食材:ポピーオイル
■ 混色制限:硫黄系絵の具との混色には注意
■ 毒性:あり
19世紀まで油絵具の白として大いに活躍した伝統的な「白」です。
ただし、鉛系の顔料のため、硫黄系の顔料と反応し硫化物を生成し黒変します。
・コバルトブルーヒュー
・ウルトラマリンライト/ディープ
・インジゴ
・ミスティーブルー
・モーブ
・ブルーバイオレット
・バイオレットグレイ
・ぺインズグレイ
■ 次の絵の具は硫黄系であるが鉛と反応しないように精製加工されています。
・バーミリオン
・カドミウム系絵の具
✅ minoのシルバーホワイトはお勧めです。
絵の具に少量のオイル混ぜて練り込むと、糸を引くくらいトロっとした粘りが出ます。
これが画面にしっとりなじんで気持ちがいい。
初心者にはパーマネントホワイト
■ 展食材:ポピーオイル
■ 混色制限:なし
■ 毒性:なし
シルバーホワイトの毒性及び混色制限、ジンクホワイトの亀裂、剥離、チタニウムホワイトの着色力の強さに対処するために開発された「白」。
通常のチタン白よりも粒子径の小さいものを使用することで、チタン白の独特の性質を改善し、使いやすいものにしている。
✅ 塗膜はしっかりしており、下描きから上描きまで自由に使えます。
塗りつぶしやハイライト表現にはチタニウムホワイト
■ 展食材:ポピーオイル
■ 混色制限:なし
■ 毒性:なし
20世紀に開発され、今日広く使用されています。
絵の具化に際し展食材を多く使用するため、絵の具は軟らかく乾燥も遅い。
乾燥塗膜にも柔軟性があります。
混色においては、少量の使用で明度を上げることができ経済的といえますが、裏を返せば使用量に注意が必要ということでもあります。
際立った美しい白‥セラミックホワイト
■ 展食材:ポピーオイル
■ 混色制限:なし
■ 毒性:なし
ホルベイン社によって開発され、1990年より販売開始されています。
✅ 安定性が高く混色制限や毒性もないので、下描きから上描きまで自由に使える「白」です。
最大の特徴は「青みの白」というところにあります。
人間の目には青みが入っている方がより白さを感じますが、他の白と比較しても青色白色度は断然大きいです。
上描き用のジンクホワイト
■ 展食材:ポピーオイル
■ 混色制限:なし
■ 毒性:なし
19世紀以降油絵具の白として活躍してきた「白」。
白の中で一番透明感があります。顔料の粒子は小さく、絵の具化の際に展食材が多くなる傾向にあり、絵の具の乾燥はシルバーホワイトより遅い。
ジンクホワイトを下塗りや中塗りに使用しないことが最大の注意点です。
地塗りの白‥ファンデーションホワイト
■ 展食材:リンシードオイル
■ 混色制限:硫黄系絵の具との混色には注意
■ 毒性:なし
ファンデーションホワイトは主に下地材として使用されます。
使用には、揮発性油で柔らかくして支持体に塗り、1ヵ月程度乾燥させてから描画に入ったほうがいいでしょう。
不透明水彩絵の具編
ジンクホワイト
■ 顔料:リトポン (硫化亜鉛・硫化バリウム)
着色力は弱く、他の色と混色した時には、穏やかに相手の色を薄めます。
✅ 水彩のジンクホワイトは油絵の具のそれとは違い、上塗りした絵の具に亀裂・剥離を生じさせることはありません。
パーマネントホワイト
■ 顔料:酸化チタン
ジンクホワイトと異なり、着色力が強く耐光性に優れた白です。
透明水彩絵の具編
透明水彩の場合あまり「白」は使いません。
色を淡くするときは「水」の量で調整します。ですから「水=白」と考えてもいいでしょう。
白くしたい部分が小さい面積の場合、不透明水彩(ガッシュ)を使って描くことが多いです。
チャイニーズホワイト
■ 顔料:酸化チタン
チャイニーズホワイトとは、中国の白磁の色を指します。
本来のチャイニーズホワイトの顔料は亜鉛華ですが、亜鉛華は水彩絵の具のような酸性溶液の中では粘度の安定を維持できないため、現在では酸化チタンが用いられています。
最後に
作品の完成度を左右させるものは「白」ではないので念のため。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
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