画材店に行くと、いろいろな種類のキャンバスを目にすると思います。
すでに木枠に張ってあるタイプや、ロールになっているタイプ、カットされたキャンバスもあります。
また、張り方やトラブルなども、気になるところです。
この記事では、キャンバスの張り方や必要な工具、キャンバスのトラブルについて紹介します。
キャンバスのサイズについて
キャンバスのサイズは、木枠の裏に印字された数字で知ることができます。
この数字が大きいほどサイズも大きくなりますが、一つだけSMと表記されたサイズのキャンバスがあります。
特に22.7×15.8のサイズをSMと表し、サムホール (英:thumb hole)と呼ばれています。
手に持って写生できる、小型のスケッチ箱に開けられた穴 (thumb hole)に由来します。
転じて、キャンバスのサイズになりました。
木枠には数字以外に、「S」「F」「P」「M」の4種類の表記があります。
これらは、次の4つの言葉の頭文字をとったものです。
■ Figure(フィギア/人物)
■ Paysage(ペイザージュ/風景)
■ Marine(マリン/海景)
✅「Square」の一辺を最長に、以下〈F〉、〈P〉、〈M〉の順に細くなっています。
表面処理の違いによるキャンバスの種類
油絵用キャンバス
油絵具で制作することを前提に作られたキャンバスです。
下地加工した後に、油絵具が塗られています。
そのため、アクリル絵の具などの水性絵の具には使えません。
アクリル用キャンバス
アクリル絵の具、油絵具の両方に使えるキャンバスです。
下地加工した後に、アクリル絵の具が塗られています。
✅ 次に紹介するキャンバスは、習作用にコストパフォーマンス抜群です。
F30号まで取れます。
アブソルバンキャンバス
テンペラ・水彩絵の具用に作られたキャンバスです。
下地加工した後に、ウサギ膠とチョーク顔料による下塗りが施されています。
グルーキャンバス
膠による下地加工のみ施されたキャンバスです。
最後の下塗りは、自分で仕上げる必要があります。
亜麻生地キャンバス
生地のみの製品です。
キャンバスの張り方
キャンバスを張るための工具と必要な画材
画材
■ キャンバス(写真はロールタイプ)
■ 木枠
小さいサイズの木枠には、桟がありません。
写真は12号サイズ。
斜めの切込みのある側が、キャンバス面です(写真左)。
内側が薄く加工してあり、直接キャンバスが触れない構造になっています(写真右)。
桟にも枠と同様の加工がしてあります。
写真左がキャンバス側です。
■ タックス
釘と違って、くさび型になっています。
工具
写真の左から
■ 指矩(さしがね:呼び方は様々あります)
■ キャンバス張り器 プライヤー No.5 (ホルベイン):大
■ キャンバス張り器 プライヤー (SANKO):小
■ 金づち:タックスの打ち込みに使用
■ 木づち:木枠の組み立てに使用
■ タックス抜き
✅ キャンバス張り器「プライヤー No.5」は、口幅が広く力を入れやすいので、大号数のキャンバスを張る際に向いています。
噛口部はゴムがついており、キャンバスが滑らず破れにくい構造になっています。
しわもできにくいです。
キャンバスの張り方
木枠の組み方
10号以上のサイズには桟があるので、桟を入れてから枠を組みます。
組みあがったら、指矩(または三角定規)を使って、コーナーの直角を確認します。
歪んだまま張ってしまうと、額に入らないこともあるので、必ずチェックしてください。
タックスを打つ順序
枠の中央からタックスを打っていきます。
順序は図の通りですが、本数は、木枠のサイズによって異なります。
※ 図の通りではありません。
タックスを打つ間隔は5~6㎝程度です。
1番2番の位置にタックスを打つと、下の写真のように縦のラインが入ります。
3番4番の位置にタックスを打つと、ひし形ができます。
このひし形を、外に広げていくように張り進めます。
コーナーの処理の仕方
短辺側を長辺側に折り込んで(写真左上)、長辺側は斜めに折りたたみます。
写真左下のように上側のキャンバスだけを引っ張り、写真右のように仕上げます。
キャンバスについて、よくある質問
せっかく描いた作品が弛んでしまった、というのはよく聞く話です。
元に戻せないのでしょうか。
その他にも、古いキャンバスを使っても問題ないか。
キャンバスを張るときの力加減はどの程度がいいのか。
ここでは、その内容と解決策を示しておきます。
キャンバスの弛みについて
一番よくある質問が、弛みを直す方法についてでしょうか。
キャンバスは、温度と湿度の影響を受けて、日々伸縮しています。
また、キャンバス面に圧がかかっても伸びてしまいます。
木枠のコーナーにクサビが入れられるタイプなら、クサビを使い調整します。
クサビを使えないタイプの木枠は、張り直すしかありません。
部分的な弛みやシワ
キャンバスの一部に何かがあたったままの状態で放置していると、その部分だけが伸びてしまいます。
その場合、伸びた部分の裏面に霧吹きか、軽くしぼったタオルなどで湿らせます。
そのまま自然に乾かすと元通りになります。
すでに描かれた作品にも同様の方法でシワを取ることができますが、部分的に収縮するため作品に対する影響がまったくないとは言い切れません。
ちなみに、30年前にこれを施した作品には、未だにヒビや剥落などのトラブルは生じていません。
※ とは言っても、これを行う場合は自己責任でお願いします。
キャンバスを張る時の力加減
張りの強さは好みの問題だと思います。
強さよりも均等に張るようにしてください。
古いキャンバスの使用について
下地に油絵具が使われているキャンバスは、時間が経つと固くなる傾向があります。
使用について問題はありませんが、張りにくくなります。
キャンバスの保管方法
硬化を防止するために、ロウ紙を巻いておくとよいでしょう。
床に寝かせておくことも良くないので、壁に立てかけておきます。
キャンバスの重みでしわになることがあるためです。
最後に
キャンバスの張り方を覚えれば、さまざまな企画の矩形や大作への対応がしやすくなるだけでなく、愛着が沸いて制作も丁寧になります。
既成の張キャンを活用することも悪くないですが、一度自分でキャンバスを張ることにも挑戦してほしいものです。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
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