絵が上達するにはデッサンを頑張る…そう思っている方は多いでしょう。
確かにそれはもっともなことです。
でも、その前に、もっと単純なことを見落としていませんか。
あまりにも当たり前すぎることに気が付いていないことが多いのです。
この記事では、初心者が見落としがちなことや、切り替えていただきたい考え方について取り上げてみました。
絵の初心者が意識すること‥かっこよく描けば絵は上手くなる
テレビドラマなどで、絵描き役の描いている姿がかっこよくないことがあります。
せっかく俳優さんはかっこいいのに、これではダメだと思ってしまいます。
たとえ作品が上手く描かれていても、描く姿とまったくかみ合ってこない。
描く姿はその人の実力を表しているのです。
逆に言うと、作品を見なくても描く姿を見れば、どの程度描けるか分かるということです。
初心者の方で、体を丸めて描いている人を見かけます。
あまり作品を見られたくないのでしょうか。
絵を隠すように、画面に接近しすぎているのです。
これでは画面全体を見ることができません。
細かいところへ目を向ける人も注意が必要です。
筆の持ち方は短くなり、画面に近づくことになるからです。
いずれにしても、画面全体を把握することができません。
絵は全体感
画面全体を見るためには、筆を長く持ち、ゆったりと腕を伸ばして、画面から半歩くらい下がる必要があります。
こういう風に構えると懐が深くなり、画面までの距離が取れるようになります。
つまり、自然と画面全体が見えるようになるということです。
画面全体が見えれば、どこがいいのか、良くないのかがわかるようになります。
「かっこよく描く」というのは理にかなっているのです。
✅ 絵が上手くなれば描く姿がかっこよくなるのではなく、かっこよく描けば絵が上手くなるのです。
絵の初心者が意識すること‥基本のポジション
描くところを見ていると、しきりに動く方がいます。
絵の出来を確かめるために、画面から離れるのであれば大変良いことですが、ここではそういう話ではありません。
椅子に座ったまま、からだを右に左にツイストしたり、あるいはメトロノームのように動かしたり、腰の曲げ伸ばしをしたり…などなど。
ここはフィットネスクラブか、というほどよく動いている(苦笑)。
「疲れませんか?」 とたずねると、あまり気になっていない様子。
イーゼルや道具の位置を変えてみる。
「あっ!描きやすくなりました」
「すごく見やすくなりました」
…などの反応が返ってきます。
イーゼルは右
モチーフを見る時、体幹がブレてはいけません。
絵の上手い人ほど無駄な動きが少ないのです。
体幹がブレる理由に、イーゼルの位置があります。
基本的には、イーゼルは右利きの方なら右に置きます。
イーゼルの位置に問題があり、画面に隠れてモチーフが見えにくいと、そこから覗きこむような見方になってしまいます。
当然、見る位置が変わりデッサンも上手くいきません。
作業効率を考える
道具の置き場所が良くないために、作業効率の悪い方を見かけます。
特に水彩を描く方に多く見受けられます。
パレットや筆洗の置き場所がよくないのです。
正面で色を塗ったら、身体を右にひねって筆を洗い、今度は大きく左にひねって色を作っている。
絵画教室はフィットネスクラブではないので、作業一連の流れを踏まえて、道具の置き場所も考えるべきです。
絵の初心者が意識すること‥大きな筆を使う
画面の大小にかかわらず、細い筆を使う人は案外たくさんいます。
背景のような広い面積を塗る時でさえ、細い筆を使っている。
大きな筆を使う方が早く塗れるにもかかわらず、わざわざ小さな筆でちまちま塗っているのです。
時間のムダでしかありません。
大掃除をするつもりなのに、アルバムの整理からやっているようなものです。
「後片付けが面倒だから、筆をたくさん汚したくない」という人もいます。
これは、ある意味要領がいいのかもしれませんが本末転倒です。
背景に限らず、人物の顔や花びらなどを描くとしても、まずは大きな筆を使って大まかに捉えていくのです。
そうは言っても、生徒さんからすると、大きな筆では細かいところが描けないと言います。
それは、細かいところばかりを見ているからです。
描き始めは、大胆に攻めていくことを心掛けましょう。
そうすれば、画面全体の色のバランスや、形のバランスを早く確認することができます。
細部に入るのはその後です。
細い筆を使って慎重に描き進めているつもりが、気が付いたらずいぶん狂っていた…というのはよくある話です。
そうならないためにも、大きな筆を使って大まかに捉える練習をするべきです。
絵の初心者が意識すること‥小さな積み重ねこそが大事
趣味の絵画教室では、それほど難しいことをレッスンするわけではありません。
絵を描くことを楽しんでいただければそれでいいので、指導に関してはごくごく当たり前のことしか言いません。
例えば、次のようなことです。
■ 筆圧が強くなりすぎないように力を抜いて描きましょう。
■ 写真は使わず、できるだけ実物を見て描きましょう。
■ 油絵具はたっぷり塗りましょう。
これらは、心がけ一つでできることばかりです。
「そんなことは分かってますよ!」という声が聞こえてきそうですが、こんな基本的なことすら身に付いていないのが現実です。
分かっていてもやれていないのは、分かっていないのと同じです。
こういった基本をおろそかにしておきながら、「基本から教えてほしい」という人がいます。
しかし、先述したようなことすら出来ていない人に、果たして何ができるのでしょうか。
初心者にとってデッサンが基本だと思っているのかもしれませんが、色のついたモチーフを白黒の明暗だけで描くことは非常に難しいし、石膏のような白いモチーフを黒く描きこんでいくのもまた難しいのです。
当然のことながら試練を強いられるので、「描けない」、「やっぱり無理だ」と言って諦めてしまうのがオチです。
凡事徹底
難しいことはできるけれども平凡なことはできない、ということはありません。
当たり前だと思うようなことをしっかり積み重ねた上で、新たに理論や技術を加えていく。
それではじめて上達していくのだと思います。
結局、小さな努力の積み重ねこそが、上達への近道となるのです。
先生だから描けるわけじゃない
教室では説明のために描いたり、モチーフによっては生徒さんと一緒に描いたりしています。
「じゃあ、こんな風に描いてみてくださいね」
なんて言うと…
「そりゃ、先生だから描けるんですよ」
…と、言われたりします。
先生は描けて当たり前とでも思っているのでしょう。
もちろん、生徒さんたちと比べれば経験の差は大きいと思います。
果たしてそれだけでしょうか。
このサイト運営も、ウェブ初心者の僕にとっては大変です。
ほとんどパソコンが使えないレベルから独学でスタートしたので、本当に何から始めていいかわかりませんでした。
なんとか公開できた後も悪戦苦闘しながら運営を続けていますが、まだまだわからないことだらけです。
エラーが発生するたびに、相談できる人もなく心が折れそうになります。
こんな時…
継続しない理由を作ってやめてしまうのか、何がなんでも続けるのか…。
気持ちの差は大きく影響します。
僕は教室で、1日15分でいいから毎日練習しましょうと言いますが、皆さん、何を描いたらいいかわからないと仰る。
でも、気負う必要なんてありません。
食卓にある塩コショウの入れ物や、玄関前に落ちていた枯れ葉、自分の手など身近な物を描けばいいんです。
とは言っても、たった15分の練習が続けられない。
わずか15分だけなんですから、何が何でも続けようという気持ちを持ってほしいものです。
初心者からの脱却!もっと絵が上手くなりたいと思ったら
絵を続けている人なら、誰もが上手くなりたいと思っているはずです。
でも、長く続けていれば、何度も伸び悩む時がきます。
そんな時の対処法はあるのでしょうか。
絵は忍耐
何度描き直しても、うまくいかない時はあります。
こういう時は精神的に辛いものです。
毎日々々頑張っているのに何の成果も得られず、今日までいったい何をしてきたんだろうと頭を抱えてしまいます。
しかし、ここで諦めてはいけません。
描き続けていれば、必ずこの壁を乗り越えられるからです。
教室でも、生徒さんが同じように苦しんでいる姿を見かけます。
趣味で絵を描くのだから、わざわざ辛い思いをしてまで、絵を描く必要はないのかもしれません。
そんな時…
「ここまでよく頑張りましたね、もうこれでいいですよ」と言う方がいいのでしょうか。
まったくの初心者であれば話は別ですが、ある程度の経験者であれば、もう一歩上の完成度を目指していただきたいので、もう一押しします。
耐え忍んで壁を乗り越える喜びは、ぜひ体験しておくべきです。
あと一歩、踏み込んでみる
安定した完成度は保っているけれども、いつもと代わり映えしなかったり、迫力に欠けていたり…そんなことを感じたことはありませんか。
教室でも、あともう一歩踏み込めばもっと良くなるのに、今終わりにするのはもったいない…と思うことがあります。
ですから、期待をもって背中を押してみるのですが、「これ以上はもう無理です」などと返ってくる。
自分では完成したと思っているのに、これ以上いったい何をするのか分からない、ということなのでしょう。
やるべきことがわからなければ、基本に返ってみたり、展覧会に足を運んでみたり、通っている教室の講師にアドバイスを求めたりしてみてください。
きっと答えが見つかるはずです。
あと一歩踏み込んでみるのと、そうでないのとでは、その後の成長の差は明らかです。
現状に満足していては、上達は難しくなります。
あと一歩踏み込んでみましょう。
量は質を凌駕するのか
「量は質を凌駕する」とはよく耳にしますが、果たして本当にそうでしょうか。
がむしゃらに描きまくったら上手くなるのか…ということですけど、これに関しては一概にそうとも言えません。
初心者と呼ばれる間は、ほとんどの人が量をこなすだけで成果は上がりますが、経験年数が長くなると、人によって成果にバラつきが見られます。
練習を重ねているのに上達しない人が出てくるのです。
これには練習方法に問題があると考えられます。
やはり「基本」を押さえて「量」をこなす必要がある。
物の見方や絵画理論が正しく身についていなければ、なかなか上手くいきません。
曖昧な部分があれば再確認し、知らないことは習得します。
その上で「量」をこなし、技術を洗練させ、「質」を高めていく。
ただやみくもに「量」をこなすだけでは、「質」を高めることは難しいのです。
結果だけに注目すれば「量」ということになりますが、基本をなおざりにして「量」をこなしても、ほとんど無意味だと思います。
「量」をこなせば、さらに「質」が上がります。
上達する人はどんどん上手くなるのです。
良い質問、悪い質問
たくさん質問をする人がいます。
いかにも熱心そうに見えますが、こういう人に限ってその内容がよくない。
すこし考えれば分かりそうなことを、次から次へと聞いてくるのです。
自分なりに調べたり考えたりして、それでも分からないことを聞くならまだしも、まったく考えずにする質問は本当に無駄ですし、場合によっては周りの人の邪魔になります。
そもそも、考えようとしてないんだから、覚えられるはずもありません。
また同じ質問を繰り返すのがオチです。
メモを取るなりすればいいものを、何もせずただわかった気になって、その場を終わってしまうのです。
ひどい場合は、「それは嫌だ」、「それは出来ない」と文句ばかり言ってくる。
自分から聞いてきたにもかかわらずです。
これでは、上達しないのも当たり前ですよね。
上達する人は自分なりに解決策を模索していることが多いので、質問も簡潔ですし聞いたことを即実践しています。
その内に、こちらが唸ってしまうしまうような質問をしてくることだってあります。
質の高い質問は、質問する側もされる側も、ともに成長できる質問です。
無駄に質問が多いのは問題です。
さらに一歩上達するために
上達するためには、次の二つの事が必須です。
■ 定着させる事。
漠然と描き続けても、上達は難しいでしょう。
絵は見て描くことが基本ですが、その中に「遠近法(透視図法)」、「構図法」、「色彩理論」、「人体の構造」など知っておくべきことがあります。
これらを理解した上で、描写力を高めていきます。
理解するためには
すぐに「分からない」という人がいます。
こういう方は、ほとんど描いていないか、何も考えていないことがほとんどです。
練習を続ける、技法書を読む、動画を見るなどしてください。
分からないことがあればどんどん質問しましょう。
理解ができたら、アウトプットしてみる
アウトプットすれば、どこがわかっていないかを確認することができます。
身内でもいいし友達でもいいので、覚えたことを話してみるのです。
相手が納得できるように説明できれば、自分も理解できているということになります。
定着させるためには
理解しただけでは不十分ですから、定着させる必要があります。
定着させるには、繰り返し練習するしかありません。
「いくらやっても覚えられない」という声を聞くことがありますが、これは単に量をこなしていないだけです。
本人はやったと言いますけど、たかだか4~5枚程度のことがほとんどです。
100枚、200枚...1000枚と描けば分かります。
ましてや、一週間に一回の教室だけでは、月に4回しかありませんから、教室に通っているだけでは十分な練習量は得られません。
積極的に練習時間を確保したいものです。
最後に
ここに挙げたことは、何から何まで当たり前のことばかりです。
また、心がけ1つで直せることばかりでもあります。
しかし、身についていない方も少なくないのです。
自分が足踏みしていると思ったら、足元をしっかり見なおしてみてください。
正しい方法で描き続けていれば、必ず成果は表れますから。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。