
透視図といえば数学的で難解なイメージが先行して、頭が受け付けないという方も多いでしょう。
しかし、こういう方は単に話しを聞こうとしていないことがほとんどです。
???? 順を追って説明を聞けば必ず理解できます。
この記事では、透視図法を学ぶ上で押さえておくべきことを解説します。
消失点とは

電車の先頭車両から真っすぐ続く線路を見たことはありませんか。
2本のレールはどこまでも平行ですが、遠くの1点で交わるように見えます。
このように、奥行き方向に平行な線が集まって見える点を「消失点(または消点)」といいます。
そして、線路の消失点はちょうど地平線(水平線)上で1点になります。

この地平線(水平線)と自分の目の高さ(視高)は一致しているのです。
座ったり、横になったりすれば目の高さは低くなり、地平線もそれにつれて下がります。
台に上がれば、それに合わせて地平線も上がります。
✅ 消失点についての詳しい説明は次のリンクからご覧ください。
地平線 (水平線)が目の高さになるワケ

地面に垂直かつ等間隔にならんだ同じ長さの杭が、限りなく続いているとします(図1-a)。

その杭を正面に見て、地面側の端に手前から順番に視線を送っていくと、杭の並びと平行なヒトの視線(図1-b 赤矢印)に近づいていきます。
杭の反対側の上端に視線を送っても同じことが言えます。
また、ある角度をもってこの杭の並びを見ても、先に述べたことと同様のことが言えます。

地面に引かれた無数の直線の集まりが地面だとすれば、各線の消失点は目の高さで一直線に集まることになります。
この線が地平線 (水平線)であり、消失点と一致することが分かります。
水平線まで何キロ?
透視図を考える上で欠かせない水平線 (地平線)ですが、現実的に水平線までどれくらいの距離があるかご存知でしょうか。

図2は地球に立つ人を表しています。
身長170センチの人が海岸から水平線を見るとします。
目の高さは身長のマイナス10センチくらいとして160センチ、地球の半径は約6400キロ。
求めるべき距離は図1の「A」の長さですから、三平方の定理を使って計算できます。
(この辺り、頭の痛くなる人は読みとばしてください)
(6400+0.0016)2=A2+64002
ここからAは約4.52キロとなります。
(大雑把な計算です)
けっこう近いということが分かります。
ちなみに身長160センチの人なら、約4.38キロ先に水平線を見ているということです。
その差約140メートル。
意外にもけっこうな距離があります。
同じ水平線を見ているつもりのカップルでも、身長が10センチ違えば見ているところはけっこう違うということですね…。
透視図の構成要素
透視図はパースとも言います。
パースはパースペクティブ(perspective)の略で、「遠近法」、「透視図法」、「透視図」などを総称してパースといいます。

透視図を考える時、「モチーフ」とそれを見る目の位置「視点」、そしてその間に透視図が描かれる「画面」の3つの関係をおさえなければなりません (図3)。
「画面」は言わば仮想のガラス板のようなものだと考えてください。
ヒトが物を見る時、上下左右好きな方向に2つの眼を動かしますが、透視図ではしっかりと固定された1つの眼として限定します。
「画面」はこの固定された視点からの視線に直行するように位置しており、
右を向けば右に、左を向けば左に位置していることになります。
「画面」に近づいて見るか、離れて見るかで「画面」上のモチーフの形は変わりますが、透視図でいう視距離は「視点」と「画面」の距離をいいます。
モチーフとの距離ではありません。
「画面」に近づいて見れば距離感は深まり、離れて見ると浅くなります。
広角レンズ、望遠レンズで見るようです。
視野について
人はどれくらいの範囲が見えているのでしょうか。
一般的に人の視野は固定した一点を見つめたままだと、水平方向に約180°、垂直方向で約130°くらいあります。
しかし、ミーティングなどでテーブルを囲んでいる時、目の前にいる人の顔を見て話しながら、隣の人の資料は読めません。
現実的には限りがあります。

対象の識別が可能な視野は約60°くらいです。
透視図を描く場合でも、この範囲で描くと絵に歪みがでません。

図4の円の中は、頂角60°の視野の範囲です。
この範囲にある立方体は自然な形に見えますが、この範囲を超えたところに描かれた立方体は不自然な形に見えます。
透視図では60°の視野の範囲まで考えていますが、実際にスケッチをする場合はもう少し範囲を狭めた方がいいと思います。
広大な風景を目の前にするとどこからどこまで切り取っていいかまったく見当もつかないという方がたくさんいらっしゃいます。
「あれも描きたい、これも描きたい…」と欲張りすぎて、描こうとする範囲が広がりすぎることが原因です。
そういう時は、主役を1つに絞りましょう。
自ずと描く範囲が決まります。
絵を描くことと視点
通常、私たちが絵を描く時、透視図法的な見方で物を見ることになります。
上下左右に頭を動かしたり、からだの向きを変えたりしません。
つまり、視点を動かさないという事です。
テ-ブルに置いたモチーフを、見えないからといって安易に手に取って見る方がいます。
見下ろしていたモチーフを、目の前でほぼ真横から見ることになります。
これでは、視点が大きく動き、見えている形も変わってしまいます。
椅子から離れて作品を見る時、立ち上がったままモチーフと見比べる方がいます。
逆に今度は見下ろす見方になるので、当然これも視点が変わります。
写実的に絵を描く基本は、1つの視点から見るということです。
これに対して、複数の視点から描いたのがセザンヌです。
そのため彼は、「近代絵画の父」と呼ばれています。
デッサンが上手くいかなかったりすると、すぐにこの辺りを例に引き出して、ピカソだとかなんとか言う人をみかけますが、勘違いしてはいけません (苦笑)。
透視図の略記号
略記号まで覚える必要はないかもしれませんが、次に挙げた言葉は覚えておきましょう。
■ EP (Eye Point)‥視点
観察者の目の位置。
■ SP (Standing Point / Station Point)‥立点または停点
観察者の立っている位置。正確には視点(EP)から地盤面に垂直に下ろした位置。
■ PP (Picture Plane)‥画面
■ HL (Horizontal Line)‥水平線または地平線
■ VP (Vanishing Point)‥消失点または消点
最後に
透視図といえば消失点の数によって一点透視図法、二点透視図法などと解釈している方は少なくないと思いますが、重要なのはモチーフと画面の関係です。
これを押さえておけば、消失点の数も見えてきますし、デッサンでの計測にも役立ちます。
遠近法、色彩、人体、構図などの講座ブログは、「絵画講座 / インデックス」として、まとめてありますので、ご活用いただければ幸いです。
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