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色彩遠近法‥色の波長による奥行き表現

色による奥行き表現
(図)

風景を描いていらっしゃる方から、こんな質問を受けたことがあります。

「この木を遠くに見えるように描きたいんですけど、明るくすればいいんですか、暗くすればいいんですか」

こういう方は頭の片隅に色の「進出」、「後退」などの知識があって、それに邪魔をされているのだと思います。

暖色系や明るい色は近くにあるように見え、寒色系や暗い色は遠くに見えるというものです。

しかし、絵はさまざまな要素が絡み合って見えているものですから、単純にこれらの性質だけでは決めらません。

では、どのように考えればよいのでしょうか。

この記事では、絵に奥行きを与える考え方を紹介します。

遠くに見えるには‥「隣の色」

まず、下絵 (線描)の段階で奥行きが描けている必要があります。

遠くの物は小さく、手前の物は大きく。

物と物の重なりは曖昧になっていないか。

当たり前のことですが、こういうことが案外できていなかったりします。

特に写真を使っている場合、注意が必要です。写された形に問題がなければいいのですが、ほとんどの場合どこかに曖昧な部分があるからです。

ですから、形がしっかり描けていることが前提となります。

明暗や色だけを考えても奥行き表現にはつながりません。

図1を見ると手前に重ねて描かれた木が明暗に関係なく手前に見えます。

モノトーンの木
(図1)

色は隣の色との関係で見えているので、「木」単体で判断はできませんし、着彩の途中でも判断できません。

必ず隣の色を意識した見方が必要です。

明暗による奥行き表現
(図2)

図1の背景を変えてみます(図2)。

極端ですが背景を真っ黒にしてみると、木と木の重なりは同じままでありながら、明るい木の方が手前に飛び出すように見えてきます。

特に右側の図は明るい木が向こう側に重ねて描いてあるにもかかわらず、一瞬手前にあるような錯覚が生じます。

このように、明暗だけでも奥行き表現に影響を与えますから、色が関わるとますます複雑になります。

遠くに見えるには‥「色の波長」

絵は必ずしも見えた通りである必要はありません。

平面化したり抽象化したりということではなく、写実的に見える範囲内での話です。

奥行きを強調するためには、すこしぐらい色を変えた方がいい場合だってあります。

色による奥行き表現
(図3)

図3のような風景では、手前の緑の木から遠くの山に向かってだんだん青みを帯びて明るく変化していく、いわゆる「空気遠近法」の効果で奥行きを表しています。

「空気遠近法」なんてたいそうな名前がついていますけど、見たままをそのまま描けばそうなります。

しかし、この風景のAの山とBの山の距離感が分かりづらいですよね。

これは、明度が近いからです。

色が違っても、明るさが似ていると、こういうことが起こります。

ここで「明度」を変えることを考えます。

色による奥行き表現
(図4)

Bの山を少し明るくしてみます(図4)。

この操作は〈形〉を見るという話になるわけですが、ここでいう〈形〉は奥行きを意識した立体構造的な形です。

Aの山とBの山の距離感は出ましたが、こんどはBの山とCの山の距離感が分かりにくくなってしまいました。

Cの山を明るくすると、またその隣の山との距離感が分かりにくくなるだけでなく、一番遠くの山が描けなくなってしまいそうです。

明るさを変えるだけでは無理があるようです。

さらに、「色相 (色み)」を変えることを考えます。

このとき、適当に変えてもいいわけではなく、色の波長をおさえなければなりません。

色には「色相」によって波長の違いがあり、距離感にも影響します。

色の波長は、〈赤〉〈橙〉〈黄〉〈緑〉〈青〉〈紫〉の順に短くなっていきます。

つまり、〈赤〉から〈紫〉に向かってだんだん遠くに見えるということです。

これを利用します。

色による奥行き表現
(図)

Cの山を〈紫〉に変え、さらにその奥の山も同系の明るい紫に変えました(図3)。

同時に、一番手前にある木をすこし〈黄〉に寄せてみます。

いかがでしょう。

絵の奥行きが深まったと思いませんか。

実際の色みとは異なりますが、この方が現実の距離感に近づくように見えます。

写真ではこの見方ができません。

現場の風景を目の前にすればこそ意識できる距離感です。

〈形 (距離感)〉を優先させれば〈色〉が犠牲になり、〈色〉を優先させれば〈形〉が犠牲になります。

どちらも取り入れようという都合のいいことはできません。

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最後に

最終的な判断は、自分が何を表したいかに拠ります。

何も考えていなければ、何も決められないということになります。


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